アメリカの大学のカリキュラムと評価システム
アメリカの留学の体験談をシリーズでご紹介しています。
第1弾の3回目は前回に引き続きサンフランシスコで留学をご経験されているYM様(20代男性)からの体験談となります。今回は、『アメリカの大学でのカリキュラムや学業について』というテーマでアメリカの大学のカリキュラムや、どうのように勉強を進めていくべきかについてご紹介しています。
私は現在、サンフランシスコにあるAcademy of Art Universityというアート系の大学に通っています。あと2ヶ月で卒業するのですが、振り返ってみると毎日とにかく忙しすぎて、ついていくのに必死で、よくここまでやってこれたものだと自分でも思います。
「日本の大学は入るのが難しく、入った後はラク、アメリカの大学はその逆で入るのは簡単で、入った後が大変」というのをよく聞きますが、だいたい当たっていると思います。
学ぶ内容がとにかく多く、また宿題の量も半端ではありません。ですから率直に言って、アメリカの大学生の方が日本の大学生よりも大変だと思います。
今回はアメリカの大学のカリキュラム、そして学業全般についてシェアしてみたいと思います。
ESL (English as Second Language) の授業
アメリカの大学の入学審査は大学によって様々で、求められる英語のレベルもそれぞれ違います。
私の大学の場合、特に「このレベルの英語力がなければ入れない」という規定は無かったのですが、留学生はみな最初にESLの授業を取ることが義務付けられています。
入学前に受けたTOEFLのスコアによってクラス分けされ、ある一定のスコア以上の人だけESL自体が免除されます。クラスは1~4までの4つのレベルに分けられ、1が基礎レベル、4が上級レベルです。
私は最初の学期にESL3のクラスを取りました。習った内容は時制や仮定法などの基礎的な文法、そしてエッセイの書き方などです。
アメリカの学校で書くエッセイはある程度フォーマットが決まっており、そのフォーマットやよく使う接続詞・言い回しなどが学べたことは本当に大きく、後のクラスでもとても役に立ちました。
またESLの授業は他のクラスと違って「生徒同士の会話と交流」に重点を置いており、そうすることで生徒の英語の向上を促しています。
ですから私も自然と他の生徒と仲良くなり、今でも彼らとはたまに連絡を取っています。
アドバイザーと相談して授業を組む
アメリカの大学では生徒1人につき必ず1人「アドバイザー」と呼ばれる人が付きます。アドバイザーは学校のカリキュラムに精通したスタッフで、履修登録を手伝ったり、また履修科目や専攻決定の相談に応じたり、学業全般にわたって生徒をサポートしてくれます。
また通っていた他の学校からの単位の移行や、クラスのwaive (放棄という意味で、簡単なクラスをスキップしてより上級のクラスを取ること)の申請なども彼らが行ってくれます。
私のアドバイザーはとても親切でフレンドリーな方で、事前にアポイントを取らなくてもOK、いつも気軽にオフィスに立ち寄っていろいろ相談していました。
しかし中にはいい加減なアドバイザーもいるらしく、私の友達も何人かアドバイザーをチェンジしていました。
卒業に必要な単位とクラスの種類について
アメリカの大学には「留年」という概念がありません。
卒業に必要な単位数が学位・またプログラム別に定められており、その単位が取れた段階で卒業ということになります。ですから2、3年で卒業する人もいますし、5、6年かかる人もいます。
また、30歳を過ぎて働きながら学校に通っている人も珍しくありません。つまり、卒業にかかる期間はクラスを取るペースによって変わるので、人それぞれだということです。
私のメジャーはAnimation & VFXで、卒業後はBFA(Bachelor of Fine Arts)という学士が与えられます。卒業までに必要な単位数は132単位で、これらの単位はCore, Major, LA(Liberal Arts), Electiveという4つのタイプのクラスに内訳されています。
つまり、Coreのクラスが36単位、Majorが42単位、Liberal Artsが45単位、Electiveが9単位で合わせて132単位取らなくてはいけない、ということです。
Coreとはその専攻の人が絶対に取らなければいけない必修科目で、Majorはその専攻の中で自分が選んで取ることができるクラスのことです。
Liberal Artsとはいわゆる一般教養のクラスで、歴史や文学、数学、化学など自分のメジャーとは直接関係ない、幅広い分野をカバーします。
Electiveとは選択科目という意味で、自分のメジャーとは直接関係のない他の分野のクラスを取ることができます。
Liberal Artsが一般教養のクラスであるのに対して、こちらは他のメジャーのクラスを取ることができるのが大きな違いです。
また、これは留学生として絶対に覚えておかなければいけないとても重要な事なのですが、留学生(学部生)は学生ビザのステータスを保つために1学期に12単位以上取らなければいけません(院生だと9単位以上)。
1クラスがだいたい3単位なので、1学期に4クラスかそれ以上取らなければいけない、ということです。単位数がそれ以下だと学生ビザの要件を満たしていないと判断され、強制送還されてしまうので注意しましょう。
また人によっては「早く卒業したいから」という理由で1学期に15単位(5クラス)取る人もいますが、私はお勧めしません。
実は私もやったことがあるのですが、忙しすぎてキャパオーバーになり、1つのクラスでCを取ってしまいました。ですので、私はその代わりに夏学期を取ることをお勧めします。
夏学期は任意なので取っても取らなくてもいいのですが、アメリカの夏休みは6、7、8月と3ヶ月もあるので、バイトでもしない限りヒマです。
早めに卒業したいのであれば、夏学期は絶対取ったほうがいいと思います。ただし授業のペースが通常の学期よりも早いので、その覚悟はしておいた方がいいでしょう。
授業について
日本の受身な授業スタイルとは違って、アメリカのクラスでは自発性・積極性を重視しています。
そのためクラスではディスカッションがよく行われますし、participation、つまり「授業にどれだけ参加しているのか」が成績に大きく影響する傾向にあります。
ただしその割合はクラスによって違うので、学期の最初にシラバス(講義要綱)をよく読むようにしましょう。シラバスには出席に関する規定や宿題の提出の仕方、midterm(中間試験)・final(期末試験)に関する事、成績の内訳など、そのクラスにおける様々な決まりごとが書かれています。
私はもともとシャイな性格で日本の学校でもほとんど発言したことはなかったのですが、こちらに来てからは成績のために一番前の席に座り、積極的に発言するようにしていました。
出席に関するルールには特に注意した方がいいと思います。
一般的に、1つのクラスにつき3回以上欠席するとそのクラスを落とすことになり、学生ビザのステータスを失います。
しかしこのルールもクラスによって違うので、とにかくシラバスをよく確認しましょう。「遅刻何回以上で1回の欠席に相当する」といったルールもあるので、絶対に遅刻はしないように!また基本的にアメリカの学校では、交通機関による遅延は遅刻の言い訳として通用しません。というか、交通機関が遅延証明書を発行すること自体が稀です。
そして厄介なことに、アメリカの公共交通機関は日常的に遅れます。ですので時間に余裕を持って家を出るようにしましょう。
またこれは冒頭でも少し触れましたが、アメリカの大学で出される宿題の量は半端ではありません。
私は週に3回しか学校に行っていませんが、それ以外の時間をすべてフルに使わなければ宿題を終わらせることができません。
週末なんか、あって無いようなものです。2日間で教科書50ページ読んでくる、しかもそれについてエッセイも書く、などというのは日常茶飯事です。
アメリカの学園ドラマではよくパーティーをしたり皆でドライブに行ったりするシーンがありますが、そのような派手な学校生活は高校までです。実際の大学生のほとんどは、図書館か家でいつも宿題に追われています。
Grading system(成績評価システム)
アメリカの学校では、A~F (Eは無い)のアルファベットを使ったletter grading systemと、GPAと呼ばれるシステムの両方を採用しています。
Aが日本の成績システムでいう「5」にあたり、4ポイントに相当します。Fが一番最低で0ポイントです。
GPAとはGrade Point Averageの略で、生徒の今までの成績の平均値を表し、最高が4.0です。アメリカでは最初に2年制のコミュニティカレッジに通い、そこから4年制の大学に編入するという
方法が一般的ですが、このコミュニティカレッジでのGPAが編入の合否を大きく左右します。
特にスタンフォード大学などの超一流校では合格者の平均GPAが3.9と非常に高く、それに達していない人は合格する確率が低くなります。
また就職活動の際にもGPAを聞かれたり履歴書に書くことがあるので、GPAは社会人になってからもずっと付いて回る、とても大事なものだといえます。
まとめ
いかがでしたか。アメリカの映画やドラマでよく見る「派手でイケイケなキャンパス生活」とは違って、実際のアメリカの大学はかなりシビアです。
みんないつも課題や宿題に追われ、GPAを高く保つために必死になって勉強しています。しかし頑張った成果として得られる「アメリカの大学を卒業した」というステータスとその経験は、国際社会の今、あなたにとって大きな武器になると思います。